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寂しさだけが身に染みる帰り道、長い足取りの中俺は歩くのを止めた。交差点を過ぎて道路を右に曲がったらそこに一人の高校生らしき男が口から血を流してしゃがみ込んでいた。
数秒見た後に足は再び動き出す。所詮他人事にしか思えない俺は気遣う事もなく通り去った。男と大分距離を離してか、ふと後ろを振り向いたら男は泣いている。馬鹿馬鹿しい。
この時世に助け合う精神なんて無い。両親が死んでから周りの反応がそれを示してくれた。上っ面だけの同情、哀れみの目で見る近所の人々。そして何よりも……
「クッ……」
思わず奥歯を噛み締めて考える事を拒む。ダメだ。今の俺に考える余地は無い。
だから俺は無になるんだ。そうすれば報われる。
そんな事も思うのも実は今だけだったのかもしれない。
それは次に差し掛かる道を右に曲がった時の事だった。
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