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石灰の臭いや、汗の臭い、それだけではない無数の臭いが折り重なり構成された空気の中に俺と一人の少女が居た。
学校のグラウンドに設置された倉庫の中、彼女が先刻まで履いていたスカートが俺のすぐ傍に綺麗に置かれている。
「先生、あのね、私だよ。あの子を殺したの」
俺は目の前の女性が何を言っているのか意味を理解できずに居た。
理解出来ることと言えば、彼女のシャツが肌蹴て華奢な肩が露出されているということくらいだ。
「意味が解らない。って顔だね」
俺の心を読み取るように彼女から放たれた言葉が言いようのない冷えた汗を滴らせた。
「お前、何を言ってるんだ。
あれは事故か自殺だった、警察が調べに調べて、そういう結果になったんじゃないか」
俺の声は震えていた。
少なくとも自分では解るほど。
いまから、S●Xをしようとしていた女生徒から、そんな事を言われたのだから何かしら普通では居られなくなってもおかしくないだろう。
「もうやめよ。
やっぱ、ダメだわ。
理解したかったけど、出来なかった」
そう言うと彼女は肌蹴て、露出されていた肌を服で包み直した。
今の言葉にどんな意味が含まれたものだったのか、気になりそうなものだが、現在の俺には深く考えられるほど思考が働かなくなっていた。
不思議なことに俺は目の前の女を怖れるよりも興味が湧いてしまっていたのだ。
もし彼女が言うとおり、あの子を殺したのが目の前に居る彼女ならば、形は違えど同じく犯罪を犯した者同士だ。
そんな事を考えているうちに、彼女は既に去る準備を終え、扉に手をかけたところだった。
俺は急いで着替えると、体育倉庫から飛び出した。
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