プロローグ

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「お、おい!」  彼女に聞こえるように声を出すと、彼女は立ち止りこちらへと振り返る。  すると、彼女は少し大きな岩を持ち上げて口元を釣り上げた。 「こういうので殺れば もっとスッキリしたのかな?」  人を殺しておいて、物足りなかったと言わんばかりの彼女の言葉と俺を弄ぶような表情に身が震えていた。  これは恐怖による震えなどではない。武者震いの方が表現としては近いのだろう。  最初は彼女の発言に冷や汗も流したが、気付けば俺は彼女の表情一つに悦びを得ている事を自覚していた。 「この事は誰にも言わないから」  俺の口は勝手に動いた。その言葉を受けて彼女は珍しく笑顔を見せた。 「私も先生のしてる事、言わないよ」  俺は彼女の笑顔を特別に贈られたもののように感じ、高揚する気持ちが溢れてゆく。  そんな気持ちの中で―― ――俺は殺された。
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