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腰に手を当て、毅然とした態度で猿共と対峙している少女は、
「さっさと散りなさい!」
と、言い切った。
どうも少女に良い感情を持ってないように見える猿共は、全員が、「はっ」と鼻で笑い、嘲るような視線を向けた。
「この場から消えるのは君の方だろう? 貧乏貴族が」
少女の目の前にいる、背が小さいお坊ちゃんが言う。
それに賛成するように、周りの猿共も、「そーだそーだ! 貧乏は帰れ!」と声を揃えて言う。
なに? この無駄な連携。
それよりも、この娘、貴族なのに貧乏か。ネルミラ皇国じゃ珍しい。
「貧乏で悪い? あんた逹みたいに、領民から税を毟り取る貴族よりマシだわ」
「なんだと!?」
「あら、本当のことじゃない」
「マリー=フィリアス! 君は喧嘩を売っているのか!?」
一触即発。
今から取っ組み合いになりそうな中、
「こら、マリー」
と、優しげな声をした男性が割って入った。
「お父様……」
どうやら、このマリーという少女の父親らしい。
ってことは、このオッサンが領主か……
「私の娘が失礼なことを申し上げ、まことに申し訳ありません」
と、男性は猿共に深々と頭を下げた。
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