第三章

55/64
前へ
/254ページ
次へ
 それからは、先程と同じ状況が続いた。  散ったはずの猿共が、わんさかと集まり一斉に話し掛けてきた。  それを俺が適当にあしらいながら時間を過ごしていると、 「さて、お集まりの皆様」  と、真っ白な衣装に身を包んだ男が手を叩き、視線を集めた。 「これより、皆様の更なる親睦を深めるため、本当の舞踏会を始めましょう」  言い終わると、隅に控えていた楽士逹による演奏が始まった。  さっき口上を述べた男……推測だが、王族だろうか? 見た目は若いから、王子か? 「ル、ルーク……どうしたら……」  ローラはおろおろと辺りを眺め、遂にきたダンスに狼狽えまくりだ。  どうしたらもなにも…… 「誰かよいお相手はおりませんでしたか?」 「相手と言われても……」  猿しか近付いてきてなかったからな。  俺がキョロキョロと周りを見てみると、異様な姿の人間を見付けた。 「……あれは」  顔面を包帯で覆い、松葉杖をついて壁際に立っている男。  先日、ボコボコにしたニトル=パーム君だった。  あんな怪我じゃ、ダンスなど出来ないだろうな。  はは。ざまぁねぇや。
/254ページ

最初のコメントを投稿しよう!

316人が本棚に入れています
本棚に追加