316人が本棚に入れています
本棚に追加
/254ページ
「では、始めましょう」
「えぇ。……踏んだらごめんなさい」
やるまえから謝罪って……
「力を抜いて、私の動きに合わせるだけで構いません」
言って、俺は彼女を抱き寄せ、メロディーに合わせて足を運んだ。
……視線が痛い。
見るからに執事な服装の俺が踊りに参加してるからだろう。
お? パーム親子も憎しみ全開で見てるじゃん。
「み、皆見てますわ……」
「私のせいですねー」
俺同様、周りの視線が気になるのか、ローラは顔を伏せた。
曲も終盤に差し掛かった頃。視界にフィリアス家の少女が入った。
相手がいないのだろう。父親とポツンと壁際にいる。
なにやら、驚いた顔で俺とローラを見ていた。
俺は、そこへ近付くため、あくまで自然に流れるように足を運んだ。
大分、フィリアス親子に近付いたところで曲は終わり、ダンスは終了した。
「き、緊張しました」
「お疲れ様です、お嬢様」
ドッと疲れが来たのだろう。ふらつく彼女を支えていると、声を掛けられた。
「あの……ちょっといい?」
振り向いた先にいたのはフィリアス家の少女、マリー。
俺から声を掛けようと思ってたが、手間が省けたぜ。
最初のコメントを投稿しよう!