第三章

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「では、始めましょう」 「えぇ。……踏んだらごめんなさい」  やるまえから謝罪って…… 「力を抜いて、私の動きに合わせるだけで構いません」  言って、俺は彼女を抱き寄せ、メロディーに合わせて足を運んだ。  ……視線が痛い。  見るからに執事な服装の俺が踊りに参加してるからだろう。  お? パーム親子も憎しみ全開で見てるじゃん。 「み、皆見てますわ……」 「私のせいですねー」  俺同様、周りの視線が気になるのか、ローラは顔を伏せた。  曲も終盤に差し掛かった頃。視界にフィリアス家の少女が入った。  相手がいないのだろう。父親とポツンと壁際にいる。  なにやら、驚いた顔で俺とローラを見ていた。  俺は、そこへ近付くため、あくまで自然に流れるように足を運んだ。  大分、フィリアス親子に近付いたところで曲は終わり、ダンスは終了した。 「き、緊張しました」 「お疲れ様です、お嬢様」  ドッと疲れが来たのだろう。ふらつく彼女を支えていると、声を掛けられた。 「あの……ちょっといい?」  振り向いた先にいたのはフィリアス家の少女、マリー。  俺から声を掛けようと思ってたが、手間が省けたぜ。
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