第三章

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     ◆ ◆ ◆  草木も眠るであろう深夜。  俺とローラは、ドゥーガとゾイルに断りを入れて、一足先に舞踏会を後にしていた。  ガラガラと車輪の音だけが聞こえている。  馬車の室内は静寂が支配していた。  ……いや、正確には静寂じゃないな。  だって…… 「すー、すー……」  と、寝息が聞こえてるし。  ダンスが終わり、ドゥーガの元へ戻ったところ、ローラの表情が芳しくなかった。  初めての社交界。  初めての公の場でのダンス。  初めて対面した貴族達。  それらによって、精神的疲労が酷かったらしい。  流石は箱入り娘だ。打たれ弱いし、体力皆無。  まぁ、そんな感じでお疲れのローラを見た親バカ肥満ドゥーガは、「一足先に帰りなさい」と、ローラに命じた訳である。  マークレイ家は、ネルミラ皇国一の貴族であるため、王族主催の舞踏会でもやりたい放題だ。  そもそも、何であんな男が当主で国一番の貴族なのか不思議だ。  ……予測の域を出ないが、恐らくはゾイルの手腕によるんだろうけど。  とにかく、だ。そんなことがあり、俺達はマークレイ家に帰宅中なのである。
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