第三章

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 ガタガト揺れること半時間。  すぐに熟睡したローラが俺にもたれ掛かったもんだから、動くに動けない……  ちくしょう。  無理矢理にでも対面した感じに座れば良かった。  下手に気遣ったらこんな事になるんだよなー。  ってことをつらつらと考えていた時。  ──ガコン!  と大きく馬車が揺れ、馬が嘶き、急停止した。 「……へ? な、なに?」  と、今の衝撃で目を覚ましたローラから離れ、俺は窓のピンク色のカーテンを引き、外の状況を伺った。  暗くてハッキリとは見えないが、月明かりを反射して光るものがあった。  ……あれは、剣か?  頭に即座に野盗の類いが浮かんだが、即、否定した。  野盗にしては、動きがおかしい。  あの動きは鍛練をちゃんと積んだ者の動きだ。  さて、御者のおっさんは震えてるし……俺がやるしかないのか……  小さく嘆息した俺は、 「お嬢様、少々表を掃除して参りますのでお待ち下さい」  と、ローラに言い、「くれぐれも、馬車から出てはなりませんよ」と釘を刺して馬車の扉を開けて、外に出た。
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