316人が本棚に入れています
本棚に追加
マークレイ家と言えば、ネルミラ皇国で一番タチの悪い貴族だ。
民を虐げるだけ虐げ、至福を肥やす底辺の貴族だ。
そんな貴族のご令嬢が、おどおどしてはいるが、礼儀正しいとは。
マリーにしたら青天の霹靂である。
そんな彼女の名前はローラ=マークレイと言うらしい。
どんな娘なのか詳しく知りたくなり、話し掛けようとしたが、最悪なことに、ローラの父親、ドゥーガ=マークレイが現れた。
ドゥーガの計らいで、ローラはマリーから去った。 それからである。
「貴様らのようなクズ貴族が、娘に近付くな」
と、虫けらを見るような目で言われた。
(クズ貴族はあんたらじゃない)
とマリーは心の中で憤慨するも、口には出さない。……否、出せない。
悔しい思いをしながらも、マリーはドゥーガに頭を下げ、トボトボと会場の隅に移動した。
悔しい。悔しい。悔しい。
下唇をギュッと噛みながら、気を抜けば溢れそうになる涙を堪えた。
そうしていると、音楽が流れ始めた。
(社交ダンスか……)
舞踏会のメインイベントだ。
パートナーを見付け、思い思いに踊り出している。
しかし、
(私には関係ない)
そう。この場では嫌われ者のマリーには相手はいない。
最初のコメントを投稿しよう!