第四章

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 マークレイ家と言えば、ネルミラ皇国で一番タチの悪い貴族だ。  民を虐げるだけ虐げ、至福を肥やす底辺の貴族だ。  そんな貴族のご令嬢が、おどおどしてはいるが、礼儀正しいとは。  マリーにしたら青天の霹靂である。  そんな彼女の名前はローラ=マークレイと言うらしい。  どんな娘なのか詳しく知りたくなり、話し掛けようとしたが、最悪なことに、ローラの父親、ドゥーガ=マークレイが現れた。  ドゥーガの計らいで、ローラはマリーから去った。 それからである。 「貴様らのようなクズ貴族が、娘に近付くな」  と、虫けらを見るような目で言われた。 (クズ貴族はあんたらじゃない)  とマリーは心の中で憤慨するも、口には出さない。……否、出せない。  悔しい思いをしながらも、マリーはドゥーガに頭を下げ、トボトボと会場の隅に移動した。  悔しい。悔しい。悔しい。  下唇をギュッと噛みながら、気を抜けば溢れそうになる涙を堪えた。  そうしていると、音楽が流れ始めた。 (社交ダンスか……)  舞踏会のメインイベントだ。  パートナーを見付け、思い思いに踊り出している。  しかし、 (私には関係ない)  そう。この場では嫌われ者のマリーには相手はいない。
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