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ようやく一区切りついたのは、パソコン相手に格闘して二日以上経過した頃だ。
前科のある人間に該当者は居らず、次は行方不明と届け出のある人間。
一区切りを意識した途端に襲ってきた疲労を感じ、彼は無言で椅子の背もたれに大きく寄りかかった。
背もたれはぎしり、と悲鳴をあげる。
時計を見ると、調査が3日目に突入していることがわかった。
今まで日付も気にする余裕など無かったし、ほぼこのスペースに缶詰めだったし、とウェイラーはぼんやり時計を眺めた。
そこで唐突にある事柄に気が付いた。
(……イノ、二日も連絡無しかよ…)
第一発見者に会いに行って、何もわからなかったなんて有り得ない、とウェイラーは思った。
逐一報告はしろ、とは言われたが膨大な情報を相手にしているのだ、進展が無ければこちらからは報告のしようがない。
(…まぁ、一朝一夕で何かわかったら、俺はこんな苦労をしてない)
ため息をつき、再び作業に戻ろうとしたとき、部屋の扉が控えめに叩かれる。
誰だ、と思いつつも彼は返事をする。
そして入って来たのは、ミラコーニだった。
「…ミラ」
「遅くまでお疲れ様、ウェイ」
ミラコーニはそう言って笑い、ウェイラーの机にコーヒーを置いた。
「好みが変わっていないならブラック、とも思ったけど最近はいろいろ負担がかかっていると思ってね。
胃に優しくミルク入りで砂糖は無しだ。
ブラックは胃に負担をかけるからな、頻繁には飲まない方がいいよ」
湯気の立つカップに手を伸ばし、ミラコーニが淹れてくれたコーヒーを飲む。
少し、気分が軽くなった。
だが、改めて礼を言うのが気恥ずかしくなり、ウェイラーはつい、そっけない返事をしてしまった。
「…いいのか? 俺なんかにコーヒー淹れてやったりして。
他の連中から村八分にされたって知らないぞ」
しかしミラコーニは穏やかに笑うと、紙袋からサンドイッチを取りだし、ウェイラーに手渡しながら言う。
「署長命令で、嫌々やってるのさ。俺の今の仕事はグライフ警部のサポートだから」
自分もサンドイッチを手に取ると、ウェイラーに向かってウィンクを飛ばして見せた。
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