己を証明出来ない人

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* (………?)  目を開けると、見知らぬ天井が飛び込んできた。  ここはどこだ、一体何がどうなった、とぼんやりする頭で考えたところで答えなど無い。 (……!)  ゆっくり身体を起こそうとすると全身に痛みが走る。  そうだ、昨晩は見知らぬ人間に絡まれて暴力を受けた、と思い出す。  その痕跡は今や清潔な白いガーゼと包帯で隠れていた。  丁寧に巻かれた包帯をしげしげと眺め、一体誰が、と考える。 (……服も、着替えてる…)  身体に合わない大きめのシャツを着ていた。  袖の余りを捲り上げられている辺り、かなり丁寧な人間らしい。いや、そうであってほしい。  しかし、下半身は何も身に付けてはいない事に気付き、彼は顔が熱くなるのを感じた。  このままでは恥ずかしすぎる、と自分の服を探そうと思った。  そっと、身体に負担をかけないようにベッドから降りようと、身体を動かそうとした時、玄関から物音がして思わず身体を硬くする。 *  午前に警察署で、できるだけの作業を終え、ウェイラーは予定通り帰宅した。  昨晩に部屋に連れ帰ったあの人間が気になって仕方なかった為、今日の予定は僥幸であった。  怪我の方は大半が打撲傷で骨折も無く、自分の手に負える範囲で良かった、とウェイラーは思う。  見るからに外国人-顔立ちは東洋系だろう-で、所持品は何も無く、金銭はもちろん身元を証明出来る物は何一つとして持っていなかった。 (…それで病院、だなんて面倒が増えるだけだしな)  ウェイラーはそんなことを考えながら、鍵を取り出してドアの鍵穴に押し込んだ。
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