異国籍の死体

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 周りを固めている憲兵に挨拶をして、張り巡らせてあるテープをくぐった。現場は鬱蒼とした林の中。  遊歩道に沿って少し歩くと、尊敬する上司の姿を見つける。 「イノ警視!」  呼びかけると彼は振り向き、軽く手を上げる。彼は走り寄った。 「…早かったな、ウェイ」  意外そうに言われ、ウェイこと、ウェイラー=グライフは軽くため息をついた。 「……急いで来いって言ったのアンタでしょ」  周りに人がいないことを確認してから、ウェイラーは砕けた口調で小さく言う。  警視であり上司のピュレ=イノはそうか、とだけ返すと発見された遺体へ目を移す。  つられてウェイラーが視線を動かすと、無惨に切断された遺体が、綺麗に本来の身体の通りに敢えて並べられて置いてあった。  思わずウェイラーは視線を反らし、大きく息をした。  イノは気にも留めることなく、置かれた遺体をじっくりと見る。  小さくまさか、とだけ呟き検死解剖をするよう指示を出した。  そしてウェイラーに、後で解剖室に来るよう伝えると、彼は無線で何かやりとりしながら立ち去った。  残された憲兵や郊外の管轄の警官達が遺体を回収し、慌ただしく動き回っている。  その様子を目にしつつ、ウェイラーは見知った姿を見つけた。  軽く手を上げると、彼に気が付いたようで軽く会釈して返してきた。  ちょっと待っていて欲しいという合図と察し、ウェイラーは彼の手が空くのを待った。  しばらくして彼は駆け寄ってくる。  先程とは違い、随分驚いているようだ。 「…ウェイ! 何でお前がこんな郊外に居るんだ?  パリに異動したばかりじゃないか」 「…あぁ、ミラ。イノ警視に呼ばれたんだ」  連絡も無くて悪かった、とウェイラーは言う。  二人は警察学校から同期で仲も良いことから、勤務地が離れていても何かと連絡は取り合っている。 「…まぁ、イノ警視が来るって聞いた時点で厄介な事になるとは思っていたけど」  ミラ、ことミラコーニは複雑そうな表情をして言った。
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