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アビは冷静に説明を始めた。
「…DNA鑑定をすれば明らかですが、それぞれの部位、頭部、右腕、左腕、上半身、下半身、右足、左足、以上は他人同士となります。
また、こちらの右足はおそらく女性ではないかと。
大腿骨の長さである程度の身長は割り出せます。
それを考慮すると、右足の女性と左足の男性は身長は然程、変わらないでしょう」
アビの説明を聞き、間近に見る異様な遺体に圧倒されていたウェイラーが、思わず呟く。
「…じゃあ、被害者は少なくとも7人いて、そう考えるとここにある以外の身体は…」
「別の場所で始末されたか、まだ保存されているか、だな」
「保存……」
「流石、イノ警視。お分かりでしたか。
こちらの遺体は全て他人同士であるにも関わらず、腐敗状況がほとんど変わらないのです」
こんなケースは初めてです、とアビは困惑したように言った。
しかし直ぐに、迷いを断ち切るように真っ直ぐイノとウェイラーを見る。
「では、これから検死解剖の方を行います。
死因などが特定できればいいのですが…、全員分は厳しいでしょう」
二人は無言で頷く。
遺体を搬送してきた警察官や憲兵は退室するようだ。
イノは顔色の悪くなっている憲兵隊長を捕まえ、捜査に関する指示を出していた。
「…遺体発見現場から半径20km地点に検問を張れ。
付近で目撃者がいないか、徹底的に調べろ。
これだけの異様な事件だ、前科の有る者はマークしろ。オカルト宗教を崇拝しているようなヤツもだ。
後で第一発見者についても知らせてくれ」
イノの指示を聞き、憲兵隊長は周りでやはり青い顔をしている部下を呼び、きびきびとした動きで出て行った。
「…我々も、得るべき情報を得ましょう」
アビがメスを手に取った。
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