異国籍の死体

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 解剖室から退室する頃には、ウェイラーもげっそりとした顔をしていた。  しかしまぁ、よく耐えた方だとイノは思う。口には出さないが。  もちろん、検死解剖で明確な死因はわからないままであった。  身体の一部しかないのだ、無理は無い。  結局、わかったことはそれぞれの部位の大まかな性別、だいたいの身長(少なくとも足の持ち主は160cm~170cm程度だった)頭部が白人男性で頭蓋骨の結合状態から年齢は20代~30代である可能性が高い、ということだ。 (……結局、身元を証明するものも一切見つかってない…)  解剖から得られた情報の少なさにアビは申し訳無いと言っていたのだが、アビに責任は一つも無い。  イノは軽くため息をつき、若干後ろを力無く歩くウェイラーを見る。  嫌味な程長い足を颯爽と動かす姿は、今の彼からは見てとれない。 (…余程、衝撃を受けたのか)  何かと異様な事件がある度に呼び出しては協力させてきたが、その彼の中の経験を今回は凌駕してしまったのかもしれない。  程無くして、二人は駐車場に着き、運転席には当たり前のようにウェイラーが座る。  その途中、イノはウェイラーに声をかける。 「私は遺体の第一発見者に話を聞いてくる。だから途中のあの大学で下ろしてくれないか。  それでお前は憲兵や管轄の警察官と一緒に身元を割り出してくれ」  ウェイラーは黙ったまま言われた大学へ車を止める。  イノは礼を言って車を降り、開いた窓から車内を覗き込んでウェイラーに言った。 「何かわかり次第連絡をする。お前の方も、頼むぞ」  ウェイラーは何も言わず一度頷き、車を走らせた。  イノはそれを見送り、大学の窓口へ向かう。
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