異国籍の死体

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*  イノを言われた大学の前で下ろし、ウェイラーは古巣である警察署へ向かった。  新人から警部補をここで過ごした。警部昇進を期に、イノにパリ市警へと引き抜かれたのはまだ最近の話だ。  ミラコーニも時を同じくして警部へ昇進をしたが、都会が苦手なミラコーニはこの片田舎に留まることにしたのだった。 (…お陰で、なんて言い方は変だが、ミラがいてくれるから古巣にも戻れる気がするな)  そうでなければ、とても協力を請うなんて出来ないだろう。  あの閉鎖的な環境で、栄転をしたウェイラーが良く思われていないのは必至だったからだ。  そもそも、あの警察署ではイノ自体も良く思われていない。  都会からやってきたお偉いさんが、好き勝手指示を出す上、部下を勝手に連れ去るような真似をした、と専らの評判だ。 (……あながち、間違っちゃいないから反論もできないしな)  突然出向くときつい視線が刺さってくる予感がしたので、ウェイラーはミラコーニに予め連絡を入れておくことにした。  胴体以外の部位ならば、指紋や網膜パターンで身元を割り出せるかもしれない。  その為のデータベースが彼には必要なのだ。  ウェイラーから連絡を受け、ミラコーニは署長室に向かう。  この署でウェイラーの栄転に理解があるのは、ミラコーニ以外に彼しかいないようなものだ。 「…例の遺体の件で身元判明の為にパリ市警のウェイラー=グライフ警部が協力を請いたいとの事です。  指紋、網膜パターンをデータベースと照合を求めています」 「そうか、わかった。ではリシュー警部はグライフ警部のサポートに回ってくれ。  また、捜査の進行状況は逐一報告するように」 「はい、わかりました」  二人は極めて形式ばった会話をした。  あくまで建前で、こんなやりとりをしてみせなければウェイラーと満足に協力できないのが、二人としては不満ではあった。 「…我が署の協力を得られたことを伝えたら良かろう」 「はい、そうします」  失礼しました、と言ってミラコーニは署長室を退室した。
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