プロローグ

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沈黙の満ちる真夜中の森。 その静寂は突如として破られた。 「逃がすな、追え!!」 冬が去る気配がする空気に、叱責し慣れたような刃の如く鋭い声が響き渡る。 それに答える声はあちこちで上がり、森の中は地を蹴る音と金属の擦れあう音でいっぱいになった。 木々をかきわけながら駆けているのは十人前後の鎧騎士達。 全員が身に付けている白銀の鎧は闇夜の中でもはっきりと見える。 その中で、数人の鎧騎士を背後に従えて駆けている者こそが声を上げた張本人だった。 例に洩れず白銀の鎧を身に付けるその騎士は、顔さえもヘルムで覆ったフルメイル姿で、全身には一切隙がない。 鎧の上から分かる体格はさほど大柄という訳ではないが、重量のある鎧をまといながらも足取りはしっかりとしている。 腰元の大振りな長剣は、不釣り合いどころかその場所こそがふさわしいかのようだ。
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