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「絶対に逃がさんぞ……!」
ヘルムの隙間から低い声が漏れる。鎧騎士は前方を走るものを睨み据えた。
鎧騎士達が追っているのは、必死で逃げている狼にも似た異形の生き物──魔物だった。
魔物は身体のあちこちに傷を負って赤い雫を滴らせているが、それでも足は止まらない。だが、その速度が段々と落ちつつあるのは明らかだ。
「隊長!!」
ふいに呼ばれ、魔物を睨み付けていた鎧騎士は足を止めずに肩越しに背後を見やる。
「どうした!」
「伝令です! 回り込もうとしている隊員がこの先に人がいるのを見たと!!」
「何っ!?」
隊長と呼ばれた鎧騎士はとっさに俊巡する。次の瞬間、鎧騎士は足を早めて魔物を包囲するために展開していた陣形を自ら崩した。
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