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はじまり
街にオレンジ色の空気が染み込む夕方。
どよめく人だかり。
期待の視線。
時折悲鳴が聞こえ、同時に溜息に似た歓声が上がる。
この時間いつも人でいっぱいにはなる。
しっかり人を流してまた人が流れ込む。そんな流れの止まらない通りが、今日は人を止めている。
そこは人と雑居ビルで犇めく繁華街。四方を大通りに囲まれたこの繁華街は、入り組んだ路地が細かい網の目を形成している。
飲食店やパチンコ店、雑貨店やあやしい店などが軒を連ねる。
そこを様々な目的で集まった様々な人間達が行き交う通り。
今日の通行人達は一様に足を止め、人だかりを作ってる。次々と通行人達が足を止め、そしてまた二人の通行人がその一部となる。
いつもと異様な雰囲気に藤島雪子は興味を惹かれていた。
傍には一緒に食事をするつもりで来ていた高澤咲が不機嫌そうにしている。
人込みが嫌いな私を繁華街に誘うだけでも十分厭味なのに、なんでわざわざ進みもしないこんな人込みに突っ込んでるの。嫌がらせ?
咲が不快の極みに達しているにも関わらず、雪子は野次馬と化していた。
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