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それは、今思えばとても軽率なことだったのかも知れない。
小学生の時にウチに来て、中学に入学する春――4月を迎えた頃に、大好きだった愛犬が亡くなった。
犬種はわからないけど、何年たっても身体が大きくならない小型犬で毛色は黒。
だからクロって呼んでいつも可愛がってた……つもりだった。
私がクラスの男子を本気で好きになった小学生の頃からあまり関心をもたなくなって、今までの記憶の中にクロとの思い出はあまりない。
最近は全然気にもかけていなかったクセに、いざ寿命を迎えて力なく横たわっているクロを見ていたら涙が出た。
犬小屋の中には、どこに行ったかわからなくなっていたリードが隠してあった。
ボロボロになったリードは、クロの残したメッセージだ。
きっと散歩に連れていかなかった事を、とても恨んでいるはずだ。
そしてあの人も。
時間というのはとても残酷だなって思う。
時間が止まるなんて事は決してありえないけど、過ぎ行く時間を見てみぬふりは出来る。
今の私がそれだった。
生まれいずる命。
厳しい世界に適応する為に、生物たちには立ち止まる事は許されずに進化して来た。
決して後ろを振り返らずに。
そうなると、今の私は摂理っていうものに逆らってるんだろう。
だからひとりぼっちになるわけだ。
みんな歩み続けているのに、進もうとしない私なんかを気にかける道理はない……
川原にある人目につかない茂みの中にクロを埋めて、家に帰る夕方の道で私は失意にうちひじがれる。
ふらふらと歩く私は、後ろから来ている車に気付いていたのかも知れない。
でも私はよけることはしなかった。
もう……いいや、って思っていたから。
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