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そんな世の土地を旅する若者が一人。
まだ十三、十四ほどの歳だろう。
顔つきに幼さがどこか残っていた。
…この少年には親がいない。
父は少年が物心ついた頃には既におらず、母は先日、少年の村が戦で焼き払われる際に焼死した。
少年は父を気にする素振りは見せてこそいないが、内心気にはなっているのだろう。
村や町に着くたび父の名を言い、聞き込みをしていた。
…この少年の母は全くと言えるほど、夫について語りたがらなかった。
唯一聞けたのは、名前くらいのものだろう。
そんな母も亡くなり、父のことを知る術を失った。
だからこそ少年はこうして聞き込みをくりかえしている。
そしてこの少年は、身を寄せるところも失った為、伯父の薦めによって離れた町の屋敷へと奉公することになったのだ。
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