【聖母マリア】

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.  五十代の男が駆けて来る。 「なんやおっさん?」  金髪の男が振り向き様に、噛んでいたガムを駆け寄って来た男目掛けて吐いた。  口から放たれたガムは、立ち止まった男の足元に落ちて、冷たいアスファルトの上に貼り付いた。 「お嬢さん行きなさい!」  金髪の男の手が少女から離れたのを見計らって、男は叫んだ。 「おっと、返事が、まだだよ。ヘヘェ」  もう一人の茶髪の男が少女の腕を掴んで、制止した。 「なんじゃおっさん、喧嘩売ってんの?」  金髪の男が近寄りながら、顎を何度も上下に動かす。  まるでトカゲが餌をキョロキョロと探してるような顔つきだった。 「いやいや、めっそうもないですよ。あちらのお嬢さんが、嫌がっていたようなので、はい……」  駆けつけた男は、ボサボサの頭を掻きながら、へこへこしていた。  駆け寄って来た時の勢いは、微塵も感じてこなかった。 「はぁ? キッタない頭しやがって、フケが飛ぶ! 向こうへ行ってろ!」  金髪の男が、今度は唾を勢い良く吐いた。 「まぁまぁ、そう尖らずに」 「いちいちウゼェーんだよ!」  金髪の男はボサボサ頭の男の腹をいきなり蹴り上げた。 「ウッ、……ィッテェ」 「このコジキ野郎!」  金髪の男がうずくまったままの男の腹を、また勢い良く蹴り上げる。  その瞬間、蹴られた男は、金髪の男の方足を両腕で抱え込むようにして必至で掴んだ。 .
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