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激しく揺り起こされて、意識を取り戻す靖。
靖は冷たいアスファルトの歩道に、うつ伏せに倒れ込んでいた。
その揺り起こす主をゆっくりと見上げる。
「……お嬢さん、怪我は?」
少女は激しく首を横に何度も振った。
その瞳の周りには、今にも零れ落ちそうな涙が溢れていた。
そして、靖にそっと手を差し伸べて、起き上がるのを手伝う。
「イテテェ、……歳かな? あはは、ありがとう」
靖は腰をさすりながら、立ち上がった。
少女は靖の冗談を余所に、また激しく首を何度も横に振る。
そして、少女の瞳から、
……スルリと、
……涙が、
……頬を伝った。
ーーー まるで涙を流す、マリア像のようだ ーーー
靖は少女の瞳に、釘付けだった。
そして、少女は靖の分厚い胸板に、飛び込んだ。
突然の事に両手を持て余す靖。
少女は靖の胸元目掛けて何度も、何度も拳を当てる。
声はせずとも、少女がしゃくり上げていることを、靖は感じ取っていた。
「……どうした? 怖かったのかい?」
靖は少女の拳を受け止めながら、空に向かって聞いた。
少女は靖の肩に両手を乗せると、ゆっくりと、靖を見上げる。
少女の顔は涙でクシャクシャだった。
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