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「吉田くん、どうかね?」
白衣を着た靖は、大学院の研究室で、ある実験をしていた。
「はい、マリアの涙の成分は人間の涙の成分とほぼ一致します。少しタンパク質が8パーセント不足ではありますが、後は同じ数値です」
助手の吉田は試験管を小刻みに左右に振りながら答えた。
「うん、タンパク質が不足なのは、やはり生身の人間ではないからだろう」
靖はボサボサの頭を忙しく掻きながら、吉田に言う。
「はい、後は何故マリアは涙を流すのか、解析するだけですね」
「あぁ、しかし各国から集めた涙が全く同じ成分だと言うだけでも、発表するには大きな成果だよ」
靖はまたボサボサの頭を掻いた。
「ですね、ではハムスターの様子を見てきます」
吉田は白いマスクを外すと、実験用のハムスターを飼育している部屋へと向かった。
靖はパソコンで日曜日に発表するマリア像の涙に関する報告書を纏め始めた。
「教授! たっ、たいへんな事が……!」
吉田の慌て様は尋常ではなかった。
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