【聖母マリア】

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.  尋常でない吉田の慌て振りに靖も慌てて、ハムスターを飼育している部屋へと駆け込んだ。 「これを見て下さい!」  吉田が指差す先には、透明のガラスケースに入った白いハムスターが忙しなく動き廻っていた。 「なっ、何ということだ……」 「このハムスターだけではありません!」  吉田は更に別のガラスケースも指差した。  同じように数匹のハムスターが動き廻っていた。 「マリアはいったい……」  ハムスターが忙しなく動き廻る光景に靖は唖然としたまま、動けずにいた。  十日前の事だった。  実験の為に数匹のハムスターを発ガンさせていた。  昨晩、息絶えかけたハムスターにマリアの涙の成分を投与した。  その息絶えかけていたハムスターが元気に動き廻っている。  しかも、全匹。  靖と吉田が驚くのは、無理もなかった。 「この事は、日曜日の発表には間に合わないが、もう一度涙の成分を調べ直そう」 「はい!」  ーーー 悲しみの涙を流すと、言われてる聖母マリア……、  いったいあなたは、何を告げたいのかね ーーー  靖は研究室の壁に飾ってある聖母マリアの絵画を見つめていた。 .
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