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「……という、明らかな事実の証明に至りました事を、報告させて頂きます」
靖の発表が終わると同時に、盛大な拍手が大学院の講義室内に響き渡った。
ハムスターがガンを克服した事も触れようとしたが、まだ証明に至るまでの事実が不足していたので、靖は敢えて口にはしなかった。
まだ鳴り止まない拍手の中で、靖の目の前に座る少女は、その場に立ち上がると、また拍手を鳴らした。
それに釣られた観衆も次々と立ち上がっては、靖へ拍手を送る。
発表会は成功だった。
「ありがとう」
壇上から降りて、少女にお礼を言う靖。
少女は満面の笑みで靖を見つめていた。
そして、用意していた一通の封筒を靖に差し出した。
「ん?」
「よ、ん、で」
「今かい?」
少女は頷いた。
ゆっくり封筒を開ける靖。
中から一枚の水色の便箋を取り出して、読み始めた。
ーーー おじ様へ
お願いがあります。
マリア様を見に連れて行って下さい。
11月11日
深夜にマリア様が見えます。
お願いします。
ユリアより ーーー
「ユリアちゃんか、良い名前だ……、えっ、明日?……」
ユリアは靖の言葉に戸惑いを隠せず、不安気な顔をする。
その手は、胸元のペンダントを強く握り締めていた。
靖は迷っていた。
明日は大事な実験が徹夜覚悟で控えていたからだ。
なかなか返事をしない靖に、ユリアは今にも泣きそうになっていた。
「……よし! わかった、行こう! マリアを見に行こう!」
ユリアは遠慮なく、靖に抱きついた。
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