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【聖母マリア】
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「少しくらい、いいじゃねぇかよぉ、オレ達に付き合えよ。ヘヘェ」
「…………」
「ねぇねぇ、黙ってないでさぁ、お茶くれぇいいじゃん」
「…………」
二十代前半の二人組の男の一人が、少女にしつこくつきまとっている。
少女は十六歳くらいで、脅えるかのように立ち尽くしたまま、両手で胸のペンダントをキツく握りしめていた。
「てめぇ、黙ってねぇで何とか言えよ! こっちだってそんなに暇じゃねぇーのっ! ったく……」
「…………」
男はガムを噛みながら、クチャクチャと忙しなく顎を動かしている。
髪は金色で肩の辺りまで伸びていて、鼻の横でピアスが時折キラリと光っていた。
少女は小刻みに震えながら尚もペンダントをキツく握りしめたまま、下を向いて立ち尽くしている。
濃紺のワンピースに黒いヒールを履いていた。
男とは対照的に黒髪のショートヘアーが印象的だった。
「てめぇ、ウンとかスンとかも言えねえのかよ! しかもさっきから何大事そうに持ってんだよ!」
男はそう言うなり、少女の腕を掴むと、ペンダントから手を離そうとした。
「オイ! やめんか!」
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