第15章

21/71
前へ
/621ページ
次へ
一般人は主に、魔力を職員達に供給し、休んで魔力の回復。 こういうサイクルで回っていた。 忙しなく周りで魔法が詠唱される中で、俺の心は此処に非ずといった感じだ。 何をしていても郁のことが頭をちらつく。 郁はこの魔物で溢れかえる中にいる。 郁が怪我をするわけないと思いながらも、最悪のことが頭を離れない。 兄貴もいるが、それでも。 戦いが始まる前にやってきた、よくわからない奴のことがあるからだ。 郁と兄貴は確かにあいつに敵意と怯えを抱いていた。 郁はきっとあいつがいるから、他の職員や属性剣達を外に出さなかったのだろう。 それほどまでに郁たちが警戒する相手。 わずかに見えた空は赤く染まっていた。 ボーン ボーン 喧騒を割くかのように金の音が響く。 一瞬、鳴ったのは白かと思ったが、白の時計は一切動いていない。 その代わりに黒の時計が再び12時を指していた。 どうやら、この時計は時刻を刻むものではないらしい。 戦いの始まりと、一時の終わりを12時の鐘で示す。 その証に、散っていく魔物。 そして、戦いが始まってからは、1分に1つを刻むことのない黒の時計。          
/621ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4654人が本棚に入れています
本棚に追加