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一般人は主に、魔力を職員達に供給し、休んで魔力の回復。
こういうサイクルで回っていた。
忙しなく周りで魔法が詠唱される中で、俺の心は此処に非ずといった感じだ。
何をしていても郁のことが頭をちらつく。
郁はこの魔物で溢れかえる中にいる。
郁が怪我をするわけないと思いながらも、最悪のことが頭を離れない。
兄貴もいるが、それでも。
戦いが始まる前にやってきた、よくわからない奴のことがあるからだ。
郁と兄貴は確かにあいつに敵意と怯えを抱いていた。
郁はきっとあいつがいるから、他の職員や属性剣達を外に出さなかったのだろう。
それほどまでに郁たちが警戒する相手。
わずかに見えた空は赤く染まっていた。
ボーン ボーン
喧騒を割くかのように金の音が響く。
一瞬、鳴ったのは白かと思ったが、白の時計は一切動いていない。
その代わりに黒の時計が再び12時を指していた。
どうやら、この時計は時刻を刻むものではないらしい。
戦いの始まりと、一時の終わりを12時の鐘で示す。
その証に、散っていく魔物。
そして、戦いが始まってからは、1分に1つを刻むことのない黒の時計。
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