第15章

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思わずといった様に優和が呟いた。 治療に少し疲れてしまったようで、郁のいるベッドに腰掛けている。 郁と兄貴はそれぞれ、天と地を指差す。 郁「男神様の名前はゼウス」 臣「女神様の名前はハデス  2人が俺たちの親だ」 名前を呟いた瞬間に一陣の風が吹き、大地が微かに揺れ動いた。 風は郁の髪を遊ぶように持ち上げ、兄貴の周りの大地は罅割れる。 郁「神様達は、ずっと俺達を見てる」 臣「そして、俺たちが互い以外を慕うことを  許さない」 突風が吹き荒れ、大地が縦に揺れる。 しかし、それは2人が神らの名を呼ぶことで収まった。 魔力の気配を一切感じなかった不思議な現象に、神の存在を信じるしかない。 そして、それらが2人を愛していることも。 郁「初めは、俺たちには何も無かった  考えることも感じることも」 臣「ただ、永遠に変わることのないエデンで  毎日を過ごした」 郁「けれど、神様が愛を俺たちに囁いた時、  わずかな変化が起こった」 郁は千里の方に手を伸ばし、『神の庭』を受けとる。        
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