第15章

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パラリと紙をめくる音が何度か。 そして、ある1ページを俺たちに見せる。 そこは、挿絵のある部分だった。 郁「わずかな知りたいという思いが生まれ、  禁断の果実を口にした」 黒の蛇にそそのかされ、赤いリンゴの実に手を伸ばすイヴ。 そこには、それがあった。 臣「そして、知恵と欲が生まれた俺たちは  エデンから追放された」 郁「けれど掟を破ってもなお、神様達は俺達を  愛してくれた  何も無い海と陸のみのトリュージアの世界で  生きていけるように様々な物をくれた」 パタンと本が閉じられ、千里に返される。 それを受けとると千里は、再び開き、眺めた。 所々、擦れて字が見えなくなっている。 俺たちが知るものは、それに現代人の解釈を補って作り上げたものだ。 時として、それは正しいこともあるが、全く異なってしまうこともある。 そして、それがただのお伽噺だと思ってしまうこともある。 郁「喉の渇きを潤すように、川と湖を」 臣「清らかな空気の為に、森林と草花を」 郁「空腹を満たすために、動物達を  こうして、トリュージアは人間界となった」            
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