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動いた軌跡は、赤黒く彩られていた。
郁「…臣…臣……」
ゆるりと郁が兄貴の体を揺らすと、兄貴はだるそうに体を持ち上げる。
そして、俺達の方へゆっくりと近づいてきた。
しかし、立ち上がることは難しいようで、這いずっている。
臣「……っ、くそ……」
ゴホゴホと咳き込むと、その口からは血が流れ出る。
訳も分からず、泣きそうになった。
そして、2人の手が結界を越えた時、千里と優和がその手を取った。
千「しっかりしてください、魔剣!」
優「少しでも治癒できるやつ、集まれ!」
千里が郁を抱え上げ、優和は兄貴をおぶさる。
2人に触れた腕や体はすぐに赤に染まっていた。
優「片っ端から傷をふさげ!
うろたえんじゃねぇ!!」
足が動かない。
赤く目の前で染まった2人がこびり付いて離れない。
息が苦しかった。
指先が冷えて、微かに震える。
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