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郁目線
どんどんと意識は遠ざかる。
こんな声では天には届かない。
拡声魔法をかけ、冷たいそれに身を預ける。
眼下には、焦った顔の先輩たち。
親父もカイル達もいた。
言葉を呟いた後、軋む体をこらえて、転移を行った。
時計となった十字架の上に。
天に向かう縦のラインに頬をくっつける。
自分と同じ暖かさだった。
潤「郁、降りてきてくれ!」
転移をした衝撃で血が流れ出る。
塞がりかかっていた傷が開いてしまったようだ。
黒の時計をちらりと見る。
もう10分を切っていた。
話したいことはたくさんあった。
したいことはもっとたくさんあった。
けど。
郁「……臣、」
臣「…かねてからの……願いが叶う…
喜ばしい事だ……」
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