第16章

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潤目線 郁が消えてから、すぐに兄貴も同じように呪文を唱え、消えていった。 2人は同じように、この地の平和を願い、その身をささげた。 郁は鎖、兄貴は鍵として、門を閉じた。 あれ以来、魔物の姿は見えない。 白い茨の塔と、そこに咲く数百の黒の薔薇のある場所は、教会になった。 祭壇の奥にそれを配置し、毎日多くの人々が祈りを捧げている。 何時の間にか、血に濡れていた2人の衣装は消え、綺麗な黒と白の衣装に変えられていた。 傷も跡かたもなく消えている。 美しい2人の姿は、彫刻の様。 けれど、その体には温かみがあった。 今では、数少ない人にのみ、郁たちに触れることが許されている。 魔物によって壊された建物は、各国のカリシュアルや王の手によって修復されていっている。 しかし、魔剣であった郁の力が抜けてしまった事は大きかったようで。 もう、王であっても国を覆うような結界は張れないという。 けれど、もうそんなものは必要ないだろうから。 そのことよりも、人類全てを守っていた郁に対し、さらなる信仰と崇拝が集まった。 兄貴に対しても、それは変わらない。
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