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潤目線
郁が消えてから、すぐに兄貴も同じように呪文を唱え、消えていった。
2人は同じように、この地の平和を願い、その身をささげた。
郁は鎖、兄貴は鍵として、門を閉じた。
あれ以来、魔物の姿は見えない。
白い茨の塔と、そこに咲く数百の黒の薔薇のある場所は、教会になった。
祭壇の奥にそれを配置し、毎日多くの人々が祈りを捧げている。
何時の間にか、血に濡れていた2人の衣装は消え、綺麗な黒と白の衣装に変えられていた。
傷も跡かたもなく消えている。
美しい2人の姿は、彫刻の様。
けれど、その体には温かみがあった。
今では、数少ない人にのみ、郁たちに触れることが許されている。
魔物によって壊された建物は、各国のカリシュアルや王の手によって修復されていっている。
しかし、魔剣であった郁の力が抜けてしまった事は大きかったようで。
もう、王であっても国を覆うような結界は張れないという。
けれど、もうそんなものは必要ないだろうから。
そのことよりも、人類全てを守っていた郁に対し、さらなる信仰と崇拝が集まった。
兄貴に対しても、それは変わらない。
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