第16章

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郁の言っていた桜の木の下に、俺はいる。 潤「郁の言っていた通りだな」 恐ろしいほどに咲く、桜。 まだ冬であり、咲くには早いというのに。 他のどの木々もまだ眠っているというのに。 これだけが咲いていた。 幹にそっと触れる。 何故だか温もりを感じた気がした。 潤「郁は知っていたのか?  それとも、咲いて欲しいと願っていたのか?」 問いかけても返ってこない問いをするのには、慣れた。 胸元にある石をぎゅっと握りしめる。 あの日、郁が消える代わりに現れた石。 これが何なのか、誰に聞いても分からなかった。 兄貴が消えた跡に、呉羽も持っていたこれは、大事に小さな鳥籠の様なものに入れて首から下げている。 捨てるのは、俺の心が許さなかった。 呉「潤、此処にいたのですか」 潤「呉羽…」 奥の方から走って来る姿を見やる。           
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