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子からは神の臭いがしない。
それは、どの子も同じであった。
そこで、アダムとイヴは悟った。
自分たちは神でもこの子らと同じものでもない、異質なものであると。
アダムとイヴは、自分たちと子を区別するため、子たちの様な者たちをヒトと呼んだ。
アダムとイヴは何時までも年老いることが無かった。
子供が生まれ、その子がまた子を産んでも、何時までも変わらぬ姿だった。
それでも、子はアダムとイヴを尊敬し、父と母と敬った。
ある時、森へ入った子らが戻らなかった。
それらを探しに行った親達も戻らなかった。
そこで、イヴとアダムは子供たちに結界を張り、森に入っていった。
そこにあったのは、扉だった。
遙かにそびえる、荘厳ともいえる石で造られた扉。
それは、ほんの少しだけ開いていた。
そこからは、禍々しく、悲しい何かが溢れていた。
その近くには、子供たちが倒れていた。
すでに息をしておらず、イヴらは嘆き、悲しんだ。
涙を流すと、その涙は扉の奥に吸い込まれるように吸い込まれていった。
どこか、心の中の何かも吸われている気がする。
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