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「……!! 」
声が聞こえたほうを振り向くと、いつの間に近づいていたのかすぐ目の前に見慣れすぎた顔があった。
「きゃっ!! 」
そんなに近くに居るとは思わず、驚いて数歩あとずさる。
「僕の愛しのアリス、お久しぶりです! お元気でしたか? 僕はモチロン元気ですよ! あなたの心配には及びません。僕はあなたの為を思い、身を引きましたが、気まぐれネコに愛想がつきたら、いつでも僕のもとへ来てくださいね!! 僕はいつでもあなたの為に生き、あなたの為に死にますから! 愛してますよアリス!! 」
「あ~……はいはい。分かった。分かったから」
正直、コイツ――ペーター=ホワイトには、ほとほと困っている。
顔を合わせる度に愛の言葉、愛の言葉……。
でも、ペーターの愛の言葉には中身がない。空っぽなのだ。
まぁ、例えそうでも毎回毎回は勘弁だ。
身を引いたとか何とか言っているが、私にはそうは思えない。
ペーターが迫ってくるのも、なくなったわけではない。
その時その時、拒否するか又は……
「久しぶり宰相さん。でさ、今度俺のに手出したら頭 撃ち抜くって前言わなかったっけ……? 」
私の肩に腕を回して、ボリスがいつもどおりのような笑顔でペーターを見ているのだが、あきらかにボリスは怒っている。ボリスからはとても強い殺気を感じた。
(やっぱり……)
ペーターは、ボリスが居ようが居まいがお構いなしに私に迫ってくる。
だから、ボリスがペーターに銃を構えることも日常と化している。
(こんな日常に慣れた私って……)
思わずため息が漏れてしまう。
すると今度は、両側から腕を掴まれる。
「お姉さん! 久しぶりだね~! ねぇねぇ、僕とあの観覧車乗ろうよ!! 」
「ズルイぞ兄弟! 僕が先にお姉さんと乗るんだよ! 」
「あ。ディーとダムじゃない。久しぶり」
青い服と青い瞳のトゥイードル=ディー。そして赤い服と赤い瞳のトゥイードル=ダム。
彼らは帽子屋屋敷の門番を務める双子だ。
見た目の愛くるしさとは裏腹に、彼らの持つ斧の餌食となった者は数知れないのだが。
「お姉さんは僕と乗りたいんだよ! 」
「そんなことないよ! お姉さんは絶対に僕と乗りたいに決まってるんだ! 」
ギャーギャーと騒ぎ出す双子たち。
アリスの前では一触即発の空気のボリスとペーター。
後ろでは双子のケンカ。
そして他には……。
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