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前を歩くお父さんとお母さんは楽しそう。
私は、まだ小さくて、恋なんてよく分からないけれど、一つだけ分かることがある。
私は、お父さんとお母さんが大好き。
お父さんとお母さんの笑った顔も大好き。
ついつい二人が話しこんでいても、私は拗ねたりしないし怒ったりもしない。
だって二人が、笑っているから。
お父さんには、私と同じネコ耳が生えていて、優しい。
木だってスルスル登ってっちゃうし、気まぐれだけど、私とお母さんをほったらかしにする、なんて真似は絶対にしない。
お母さんは、とっても優しい。お母さんにはネコ耳は生えてないけど、私の綺麗な髪はお母さん譲りだ。
だから私はお父さんもお母さんも大好き。
二人が笑っていることが私の幸せ。
お父さんとお母さんと居られるだけで幸せなの。
――私は、サーナ・エレイ。6歳。
ネコと人間のハーフのような立場。
でも、この世界の人たちはそんなの気にしないから、私だって全然気にしていない。
前を歩くお父さんとお母さんは、時折顔を見合わせて笑って、とっても仲良し。私もとっても嬉しい。
「……あ、蝶々! 」
チラッとお父さんたちの方を見る。
――ちょっとくらい、大丈夫だよね?
そう思って、二人の近くをソッと離れて私は蝶々を追いかけた。
どれくらい追いかけただろうか。
しばらくすると蝶々は、私が届かないくらい高く飛んで、どこかに行ってしまった。
「あ~ぁ……蝶々さん行っちゃった……あれ? ここ……どこ? 」
気がつくと、私は一人 知らない場所に居た。
「……私、こんな所知らない。どうしよう……迷子になっちゃった」
お父さんのお友達(?)のゴーランドおじさんがやっているこの遊園地は、何回も来たことがあって、私の二つ目の家と言ってもいいくらい。
でも、こんなところは初めてきた。
「どうしよう……」
その時、前にお母さんに言われたことを思い出した。
『サーナ、いい? もしも迷子になったりしたら、お歌を歌うのよ?』
『なんで? 』
『あのね、心をこめてサーナの綺麗な声で歌えば、私もボリス……お父さんもどこにでも駆けつけることが出来るのよ? 』
『お父さんもお母さんも凄いんだね!! 』
サーナは口を開いた。
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