13人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
二人で息を弾ませて……いや違った。
息を弾ませた私と、涼しい顔をしているボリスはやっとサーナを見つけた。
「あ。あっちにサーナが居たよ、アリス!! 行こう! 」
「ボリス……さ、先に行ってて……私、歩いて行くから……」
(さすがに、もう限界……。私、ボリスみたいにネコじゃないから、そんなに体力ない……)
そう思って、握っていた手を離そうとしたのだけれど……
「ダメだよ、アリス。俺、離さないから」
「で、でも私、もうムリ……」
私が、そう言うとボリスはニヤリと笑った。
(……なんだか嫌な予感が…………)
すると、ボリスは器用に私の手を握ったまま私を抱え上げた。
――しかもお姫様抱っこ。
「ちょ、ちょっとボリス! 恥ずかしいから下ろして!! 」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
「ヤダ。俺はアリスもサーナも好きだから、アリスを置いて行く事もサーナをほったらかしにする事もしたくないんだ。」
「だからって何でお姫様抱っこなのよ~~……」
絶対に顔が真っ赤になっているから、見られないようにボリスの肩に顔を埋める。
(あ。ボリスの匂い……なんだか安心する……)
チラッとボリスの肩越しに園内を見ると、皆(主に従業員さんたち)がこちらを微笑ましげに見ている。
(…………恥ずかしい……。これ以上ボリスが暴走しないようにしないと、私が危ない…………)
前を見ると、だいぶサーナに近づいていた。
「ねぇボリス」
「ん? 何、アリス? 」
「もう走れるから下ろして」
するとボリスは途端に不服そうな顔になった。
「えぇ~!! 俺、まだアリスとくっついていたいんだけど」
「……知るか。家で充分すぎるほど、くっついてるでしょ(ボリスがくっついてくる)」
「俺、全然 充分じゃないんだけど」
「……はぁ。ボリス、お願い。サーナの前ではちょっと恥ずかしすぎるから……」
そう言って俯く。
「…………分かった。じゃ、もうすぐだから歩いて行こうか」
そう言って、ボリスはストンと私を下ろしてくれた。
ボリスは、私が本当に嫌がることはしない。
基本的に無理強いもしない。
頭が良いから、人の気持ちをすぐ察することも出来る。
だから、見た目はともかく、性格(?)はこの世界においてはマトモに入る。……と思う。
最初のコメントを投稿しよう!