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時間だってランダムだし、季節だって無い。天気も変わらない。
それに……私の居た世界には、なかなか居ない存在ばかりがいる。
ボリスは言うまでもなくネコだから、ネコなら良いという考えなのだろう。
実際のところは、そういう事ではないのだが……
「……まぁ、そうかもね。ボリスなら……ね」
なんとなく言い返す気にもならず、頷いておく。
「……じゃあそろそろ行こうか!! 」
ボリスの言葉に顔を上げると、歌い終わったらしいサーナがこちらを見て笑顔を浮かべていた。
「お父さん! お母さん! 」
サーナは、座っていたベンチから立ち上がると、走り寄ってきてボリスに抱きしめられる。
「サーナ、大丈夫だった? 」
「うん!! 全然平気だよ! あのね、お歌を歌ってたらね、ウサギのお兄ちゃんと双子のお兄ちゃんと帽子屋のお兄ちゃんが来てね、高い高いとかナデナデしてもらったの!! 」
ボリスと顔を見合わせる。
サーナが言っているのは、間違いなく帽子屋ファミリーだ。
そして帽子屋ファミリーが遊園地に居るということは……
「ボリス。まさか次の順番って……」
「……うん。ここ」
ボリスもすっかり忘れていたらしい。
「……ボリス、サーナ、帰ろう」
なんだか、とても嫌な予感がする。
背中を悪寒が這い上がってくる。
サーナを抱えたボリスと並んで、急いで遊園地の出口へ向かう。
と、その時
「やっと見つけたぞ、ボリス……」
背後から聞き慣れた声。
しかしその声は怒りを帯びている。
恐る恐る振り向くと、案の定 黄色くて、音符と木馬をモチーフにした陽気なスーツを着て、ライフルを握った凄い形相のゴーランドが立っていた。
「げ。おっさん。俺、今とりこみ中なんだよね~。後にしてくんない? 」
「また俺の新作アトラクションを勝手に改造しといて何言ってんだよ、クソネコがぁ! おかげさまでな、水ん中に落ちる人が続出してんだよ」
「へ~。冷たくて良いんじゃない? 」
「そういうことじゃねぇだろ!! 」
がぅん!がぅん!
ゴーランドさん愛用のライフルが雄叫びをあげる。
すると今度は近くから少し高めの元誘拐犯の声が。
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