命の恩人

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あの日の発砲事件は、なぜかニュースの記事にもならなくて。 だけど、わたしがケガしたことで周りはかかわり合いになるのを怖れて友達は、ひとり、またひとりとわたしから離れていった。 今、そばにいてくれるのは幼馴染みの樹だけ。 「おまえ、まだ大神物産の三男坊のとこにいるの?もしかしてさ、そいつ、おまえのこと好きになったりして」 「それ、ないから。だって奏さんは大人だもの。子供みたいなわたしには興味もないから」 わたしを命の恩人だって言って、狙われてるわたしを守ってくれてる。 わたしがケガしたから、治るまで面倒を看てくれてる。ただそれだけ。 「ふーん、違うのか。だったら」 樹の声が途切れた。 「俺と付き合わないか?俺、おまえがずっと前から好きだったんだ」 「え?」 絶対…聞き間違いって思ったけど、樹は真剣な目をしていた。 その瞳を息を飲んで見つめ返す。 その告白がクラスの男子がに聞こえたんだろう。冷やかす声が聞こえた。 「返事はよく考えてからでいいから」
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