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僕はその時魅せられていた。
たった一人の少女に。
そして我に返り声を掛けようとした。
しかし、一足先に少女が沈黙を破った。
「君は何を願うんだい?」
あまりにも唐突な質問に僕は答えるすべもなく立ちすくんでいた。
少女は淡々と発する。
「私は君の想いと死者の魂を奏でる為に来た、言わば代弁者だよ。だからもう一度問おう。君は亡くなった両親にどのような想いを伝えたいんだい?」
「僕は」
―いつもの自分らしくない。
「父さんと母さんに」
―こんな電波的かつ非現実的な言葉を鵜呑みにするなんて。
「今までの感謝を」
―ただそれでも口から言葉が出て来るのは
「ありがとう」
―これが素直な自分の気持ちだということ。
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