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スタート。
みんな一目散に走り出す。
最初はペースなど関係なしに、とりあえず自分のポジションを作り出す。
なんと私はその時点で先頭に立ってしまった。
今まで、地区大会ですら入賞とは無縁だった私が先頭…
そのまま1周。
私の中学の応援席ではかなり盛り上がっていた。
そりゃそうだ。
私が先頭なのだから。
ラスト1周。鐘が鳴る。
私はそのまま先頭を走っていた。
私のすぐ後ろには地区大会で毎回優勝している坂本さん。
坂本さんの息が私の耳にも聞こえるくらいの距離だ。
怖い。
残り半周。200m。
坂本さんのペースが上がったのが分かる。
負けたくない。
『千絵先輩、ファイトです!ラストですよ!』
大輔の声だった。
私もその声に応えるようにスピードを上げようとする。
…が、体が思うように動かない。
残り100m。
坂本さんに並ばれた。
一歩足を踏み出す度に膝から崩れ落ちそうになる。
残りわずかなのに…
『千絵先輩!負けちゃダメです!前向いて!』
私は必死に坂本さんに食らいつく。
絶対に抜かせない。
私が一番なんだから!
しかし、練習不足が祟ったのか、残り50mからみるみる離されてしまった。
結果。2位。
私にしては上出来だった。
記録も自己記録を20秒更新した。
でも悔しかった。
涙が出た。
ゴールで待っていたのはジャージを託した健二。
健二は私に無言でジャージとボトルを差し出す。
私はそれを受け取ることが出来なかった。
そしてそのまま泣き崩れた。
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