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巻き上がる雪煙が陽を散らす。
蒼穹の映える白い景色が、かくも幻想的な舞台に変わっていた。
狂瀾怒濤のその最中、この舞台の中枢だけはひどく厳かな空気に満ちている。
ステンドグラスを透したような霞の光。
浮かびあがる 碧い 影。
「ごきげんよう、フロイライン」
まるでその場所だけが隔離された異界のように、周りの喧噪も叫喚も意に返さず彼女は
微笑みを湛えてそこに 居た。
「ど…して……?」
大気の冷たさの所為ではない。
あまりにも信じられないとでも言いたげに、彼女を見る乙女の表情は驚愕に凍り付いた。
此度は素晴らしい晴天の日。
しかしそれは昨日の猛吹雪を引き換えにして得たような物。
それでなくとも悪天候の続いていたと言うのに、そんな雪山をわざわざ行軍してくるなどと、いったい誰が思うだろうか。
それ故に、まさか今日、彼女が、彼女が率いる敵軍が、
まさか
目の前に現れる等とは乙女は思いもしなかったのだ。
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