15人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく呆然としていたが、萎える気力にムチを打って動き出した。
メイン通りから何度もわき道に入り、丹念に蕎麦屋がないか確かめていく。
東京が小さな町でよかった、田舎だったらこうはいかない。
ローラーをかけるように表参道を歩いていくと、
「あったぁ」
夕闇に沈んだひっそりとした路地に、
『杉蕎麦』
提灯風の看板が浮かび上がっているのを見つけた。
携帯を取り出して時間を確認すると時刻は8時過ぎ。
店もまだ開いているようだ。
「間に合った」
なんとか、ソバ男と『出会う』ことはクリアできそうだ。
運命の重大な扉をあけるような気がしながら、
私は木戸をひいた。
「いらっしゃいませ」
「あ」
驚いて動きを止める。
「え…??松本さん??」
懐かしい声で呼ばれるのを聞いた。
最初のコメントを投稿しよう!