そんなの無理!

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しばらく呆然としていたが、萎える気力にムチを打って動き出した。 メイン通りから何度もわき道に入り、丹念に蕎麦屋がないか確かめていく。 東京が小さな町でよかった、田舎だったらこうはいかない。 ローラーをかけるように表参道を歩いていくと、 「あったぁ」 夕闇に沈んだひっそりとした路地に、 『杉蕎麦』 提灯風の看板が浮かび上がっているのを見つけた。 携帯を取り出して時間を確認すると時刻は8時過ぎ。 店もまだ開いているようだ。 「間に合った」 なんとか、ソバ男と『出会う』ことはクリアできそうだ。 運命の重大な扉をあけるような気がしながら、 私は木戸をひいた。 「いらっしゃいませ」 「あ」 驚いて動きを止める。 「え…??松本さん??」 懐かしい声で呼ばれるのを聞いた。
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