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「町岡くん…なんで?」
蕎麦屋の中に居たのは、探していた運命のソバ男ではなく、
高校時代に散々胸を焦がした初恋の町岡俊介だった。
「松本さん?驚いたな。そういえば東京の大学に進学したんだっけ」
オレここでバイトしてるんだと、ニコニコ笑顔を見せる。
「あ、蕎麦食べに来たんだよね。何にする?」
座席を引きながら、低い声で問い掛けてくる。
突然、あの頃の胸の傷みが甦った。
町岡くんは、落ち着いていて、どこか寂しげで。
私以外にも、たくさんの女子が彼に惹かれていた。
暗黙の牽制戦が続く中、ひょいと突然飛び出した子がいた。
可愛いと言えば可愛い。
けど、とびきりというわけではない子。
ただ、他の女子がお互いをライバル視して横の動きに目を光らせていたのに対して
彼女はただ町岡くんだけを見て、真っ直ぐに恋心を打ち明けた。
私は、勘違いじゃなければけっこう町岡くんの近くにいたはずなのに…。
「松本さん、どうしたの?」
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