初恋

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話しかけられて、自分が物思いにふけっていたのに気づいた。 浅黒い肌、シャープなアゴ、つり目なのに優しい目でこっちを見てくる。 おかしそうに笑うと、 「相変わらずだな」 と言って私の目の前で手をヒラヒラさせた。 懐かしい仕草。 「突然だからびっくりして」 「松本さんは、よくボーッとしてたからね」 授業中や休み時間。 空想癖と言うか、物思いにふける私の目の前で、よく町岡くんは手をヒラヒラさせて笑っていた。 「松本さんが、何を考えてるか知りたくなる」 ある日の放課後、言われた。 あれはどういう意味だったんだろう。 あまり自分から女子に話しかけない町岡くんが私にそう言うのが 物凄くうれしかった。 「ハハッ。言ってるそばからまたボーッとしてる」 「そば…ソバ、蕎麦!?」 「おっ!?…蕎麦…だけど??」 感傷に浸っているところを、ソバというキーワードで呼び覚まされた。 私は、ソバ男を探していたのだ。 時間を確認すると9時前だ。思いの外、時間が過ぎている。
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