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私は駆けていた。
ソバ男を追いかけて。
息が切れる。
足がもつれそうだ。
白いユニフォームはみつからない。
もし見つけられなかったら、私はドン底みたいな人生を強いられることになる。
信じられないが、神様があらわれて願掛けを聞き遂げたというのだ。
表参道を猛ダッシュするイモ女にまわりの人が好奇な視線を送ってくるのを感じながら
さっきのことを思い出していた。
「だからぼくは神様なんだよね。願掛けられてさ、はりきって叶えてあげようとしてたわけなのよ」
そのへんの小太りのおっさんの風貌で神様が言う。
「神様だなんて…」
「なんでなのよ。あなたが願掛けたんでしょ、松本ミキちゃん」
知らないはずの名前を呼ばれてギョッとした。
「信じないのね、じゃあさ。コレ見ててよ」
神様は、街路樹に手を触れた。
新緑の葉がみるみる間に紅葉する。
驚きすぎて声が出ない。
口をパクパクしていると、
「ちょっと時間を進めてみました」
と言った。
この人…神様かも!
ただ、これを見ていたのは私だけじゃないわけで、
道行く人があんぐりと口を開けて静止している。
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