跡取り息子

3/5
前へ
/16ページ
次へ
「楓様?!だ、誰か医者を、医者を早く!!」  楓は、門を潜った途端に、気を失って倒れたのだ。  そして今に至る。 「う、うん……此処は……」  気を失って倒れた楓は、部屋に運ばれ、気が付けば布団の中に入っていた。 周りを見れば、自分の部屋と解った楓は、布団の中から出ようとしていたら、襖がスーと開いた。 「楓様!?起きられて大丈夫なのですか?もうすぐしたら、医者が参りますから」 「……椿……」  まだ、身体がだるいのか、楓の声が少し小さくなっていた。 「私はいったい……」 「楓様は、門を潜ったとたんに、お倒れになったのですよ。すごぐ心配したのですよ。」 「……ごめんなさい……」  俯く楓に、椿はフワリと笑いゆっくりと楓の横に座り―― 「もう良いのです、楓様が無事ならそれで良いのです。さっ、もう一度、横になりましょうね」  楓を横に横に寝かした其の時だった。 「失礼いたします、医者をお連れいしました」 「お入りなさい」  女中の桜が医者を連れて来て、障子越しに声をかけ、椿が中に入るように答えた。 「失礼します、森内鴎外ともうします」 「どうぞ、こちらへ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加