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「楓様?!だ、誰か医者を、医者を早く!!」
楓は、門を潜った途端に、気を失って倒れたのだ。
そして今に至る。
「う、うん……此処は……」
気を失って倒れた楓は、部屋に運ばれ、気が付けば布団の中に入っていた。
周りを見れば、自分の部屋と解った楓は、布団の中から出ようとしていたら、襖がスーと開いた。
「楓様!?起きられて大丈夫なのですか?もうすぐしたら、医者が参りますから」
「……椿……」
まだ、身体がだるいのか、楓の声が少し小さくなっていた。
「私はいったい……」
「楓様は、門を潜ったとたんに、お倒れになったのですよ。すごぐ心配したのですよ。」
「……ごめんなさい……」
俯く楓に、椿はフワリと笑いゆっくりと楓の横に座り――
「もう良いのです、楓様が無事ならそれで良いのです。さっ、もう一度、横になりましょうね」
楓を横に横に寝かした其の時だった。
「失礼いたします、医者をお連れいしました」
「お入りなさい」
女中の桜が医者を連れて来て、障子越しに声をかけ、椿が中に入るように答えた。
「失礼します、森内鴎外ともうします」
「どうぞ、こちらへ」
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