母は強し

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 「……楓……」  楓が顔を上げれば、必然的に絡まる二人の視線。小さく名を呼べば、甘い雰囲気にもなるわけでーー  が、其の時、部屋の外が何やら騒がしくなる。段々と近付いてくる怒鳴り声とバタバタとした慌ただしい複数の足音。二人は何事と顔を見合わせ、障子戸を眺めた。  足音は二人の部屋の前で止まったかと思った刹那、スパンッという音が付きそうな程の勢いで障子戸が開け放たれた。  まぁ、其処に居るのは何時もの面々で。後ろからはーー  「ーーっ!主様の許可なく、勝手に上がり込まないで下さいっ!!」  という女中頭である椿の叫び声とーー  「其処は正宗様と楓様の寝室故、早々に立ち去れ!」  慌てて椿の後ろから駈け付けて来た小十郎の声が響いた。  しかし、そんな二人を振り切り、言葉を無視した面子はずかずかと部屋へ上がり込む。其の光景に政宗と楓は只々、呆れた視線を送るだけだった。  「よぅ!久し振り、お二人さん」  「なっ!佐助、ちゃんと挨拶くらいするでござるよ。 政宗殿、楓殿、お久し振りでござる。あ、これは、家のお館様からの楓殿の出産祝いでござる」  佐助、幸村と言葉を続けて差し出されたのは……酒。
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