母は強し

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 今、此処に居るのは名だたる武将や忍びばかり。本気を出せば、こんな門戸の一つや二つ破壊するのは容易い、のだが。 それを実行してしまえば、それにこそ楓の怒りは心頭し、二度と城の敷居は跨げなくなってします事だろう。そう思うと誰も実行に移す事は出来なかった。  丁度、一刻が過ぎた頃。  ゆっくりと門戸が開かれたかと思うと、其の隙間から椿が顔を覗かせた。やっと内に入れると期待するも、それは見事に打ち砕かれる。  「……小十郎様。少々宜しいですか?」  小十郎が椿に歩み寄れば、周囲の面々に恨まし気な視線を向けられてしまう始末。気まずく思いながら口を開く。  「椿、どうした、何かあったのか?」  「いえ、その……、夕餉の仕事で。ずっと小十郎様に任せっきりだったもので……、他の者も戸惑っておりますし。小十郎様に戻って来て頂こうかと思いまして」  苦笑混じりに言えば、「ああ」と小さく呟いた。  「あ!じゃあ、俺も俺も! 俺様も、普段からやってるから、役に立てると思うだけど」  はいはーい!と片手を上げて近付いてくる佐助。それを訝し気に見遣るも、椿は溜め息を一つ零し、是の意味を込めて小さく頷いた。
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