両雄、会い見える。

20/31
2458人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
◆◆◆ 徐庶は兵士に連れられ天幕を出ると、表の兵士に預けていた剣を返して貰い帯刀する。 「兵士さん、後は俺が引き継ぐから持ち場に戻って良いよ」 「はっ!ではお任せします!」 声に振り返ると天幕の方から男が近づいてきていた。 爽やかなイメージのとても整った顔つき、絵に描いたような好青年だ。 そして、先程の天幕内で見た顔だと思い至る。 「どちらさんだい? たしか軍義の場にも居たようだけど、オイラに何のようかな」 「俺は北郷一刀。 ちょっと徐庶ちゃんが気になってさ。 良かったら俺に案内させてくれないかな?」 そう言って振り撒く爽やかな笑顔は見惚れるほどだ。 「……じゃあ、お願いするよ」 笑顔で頷く北郷は徐庶をエスコートする。 そして徐庶は直ぐ何かを思い出したのか声をあげた。 「ああ、聞いた名前だと思ったら天の御遣いさんだったかな?」 その言葉に北郷は苦笑しながら頬を掻く。 「一応ね。 でも、俺自身にその自覚はないかな」 「ふーん」 その返事に感情は見られない。 興味を失った事を隠すそぶりも見せず、徐庶は淡々と足を前に運んだ。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!